沢山もらったいちじくは、数個を残して全て、私たちの手によってスライスされた。
スライスされたいちじくはひなたちゃんの手によって、鍋に入れられ、水、レモン汁、砂糖がその上にかけられる。
カチカチカチ。ボォ。
コンロに火がつく。やがて、鍋が温まり水が沸々と踊り出す。
「これで、あとは、少し時間をかけて煮詰めて完成だよぉ」
「ジャムって、意外と簡単に出来るのねえ」
「あ、そうだ、莉緒さん。ジャムをいれる空き瓶とかあるだろうか？」
「空き瓶かー。そういえば考えてなかったわね」
先日こっそりこのみ姉さんとプロデューサーくんと１杯やったときの、空の酒瓶はあるかもしれないけど、さすがにジャムをいれるには不適切だろう。
「ジャムが出来るのにはまだ時間かかるんでしょ？」
「３０分くらいはかかるんでないかなぁ」
「じゃあ、ここ、ひなたちゃんに任せても良いかな？ １００均に行って、空き瓶何個か買ってくるわ」
「うん。わかったよ」
私はジャムをひなたちゃんに任せ、近くの１００均に足を向ける。
――せっかくだから、お茶会も良いかもしれないわね。
いちじくのジャムを使ったロシアンティーパーティ。
ひなたちゃんもきっと喜んでくれるよね。
ひなたちゃんの笑顔を想い浮かべると、自分も自然に笑顔になる。
私の１００均に向かう足取りは軽かった。
「ただいまー」
「お帰りなさい、莉緒さん。ありゃ。ずいぶんといろいろ買い込んできたんだねぇ」
大きくふくらんだ買い物袋見てひなたちゃんが驚く。
「せっかくだから、このイチジクのジャムを使ってお茶会でしようと思って、いろいろ買いこんできちゃった」
そういいながら、私は給湯室のテーブルの上に空き瓶と買ってきたイチゴジャムやマーマレードを並べる。
「莉緒さん、なして、ジャムを買ってきたんだい？」
ひなたちゃんが小首をかしげながら私に質問する。
「ひなたちゃん、ロシアンティーって知らない？」
「ロシアンティーってロシアのお茶かい。近所に売ってるだろか？」
「ロシアンティーっていうのは、ジャムを舐めながら紅茶を飲むの」
「紅茶にジャムを入れるんじゃなくて、舐めるのかい？」
「そうそう。せっかくひなたちゃんが、いちじくをジャムにしてくれたから、ロシアンティーパーティーとかどうかしら？」
「それは楽しそうだねぇ。ジャムもできあがったし、それじゃあ、お茶の準備をしなきゃねえ」
このみ姉さんと飲むお酒も美味しいけど、ひなたちゃんと飲むロシアンティーも絶対に美味しい。
私はそう確信しながら、嬉しそうにお茶の準備をしてくれるひなたちゃんを見守った。
FIN
あとがき
あとがき
どなたか忘れちゃったんですが、リクエストをとったときに、【莉緒】ともらったんですね。その後すぐに公式から供給があって、じゃあ、せっかくだから、このお話の続きを書こうと思ったのでした。