あたしは、中庭に立っていた。
それは、あなたの思い出の場所。学校に来られないはずのあなたがこの学校で一番多く訪れた場所。
北の街の冷たい春の風を浴びながら、あたしはそこにいない、でも、きっとそばにいる彼女に話しかける。
ねえ、栞、聞いてよ。
あなたがいなくなった後、大変だったから。
でもね、相沢君があたしのことを救ってくれたの。あと、どんなに名雪がお節介だったか。
そして、そんなお節介にどれだけあたしが助けられたか。
ねえ、栞、聞いてよ。
あたしにも恋人ができたの。あなたとは違う。でも、あたしにとってはあなたと同じくらい、大切な人。
あなたも大好きだった人。あなたのことを本当に愛してくれていた人。
北川君にも助けられたの。落ち込んでいるあたしたちの中で唯一変わらない日常を演じてくれてくれた。その日常にどれだけあたしが救われたか。
名雪も、相沢君も、そして北川君も、ぼろぼろだったあたしを我慢強く支えてくれた。
大切な妹を失い道に迷っていたあたしは、みんなのおかげで、この町を出ることなく高校を卒業することになった。
４月から大学生。あなたのような人を一人でも救いたいから、前から話していたとおり、医大に進むことになったわ。
ねえ、栞。あなたと見たいと思っていた夢はあの時とぎれてしまったけれど、あたしはみんなのおかげで、絶望から立ち直れることができたわ。
ねえ、栞。あの時の夢はとぎれてしまったけど、二人の関係は、まだ続いているって思っていて良いかしら。
あの時、あたしはあれだけひどいこと言ったけど、それは、大切な妹失うことに心が耐え切れられなかったから。
そんな風に、私が弁解したら駄目なんだけど、それはきっと、本当のことだから。あたしは、栞のことが大好きだから。
ねえ、栞。あたしはまだ、あなたのことが大好きだけど、あなたはあたしのことを好きって言ってくれる？
だめだろうね？ あたしはどうしようもないお姉ちゃんだったから。あなたのことを拒絶してしまった、本当に駄目なお姉ちゃんだったから。
ねえ、栞。もう少し、もう少し経ったら、あなたに逢いに行っていいかな？
そんな素敵な仲間たちのおかげで、あたしは高校を卒業できて医大に進むことができたっていう報告をあなたにちゃんとしたいから。
ねえ栞………。
途切れた夢、二人の続き、
ある晴れた日の昼下がり、
君への想い、今はまだ……。
あとがき
第12回ピンポイントお題SSシリーズ お題「空」
完敗です。全く、お話になりませんでした。
ネタが全然お話に結びつかなかったです。
まあ、継続は力なりと言うことで、以前に書いた作品に手を入れて、出すことにしました。
空という言葉は一度も入っていないけど、何となく空を感じさせることが出来ているのではないかと個人的には思っています。